メロンクリームソーダがメニューにあると10回に一度は注文してしまう。メロンクリームソーダは私にとって特別なスイーツだ。
甘いものが特別好きなわけでも、炭酸が特別好きなわけでもない。なのにメロンクリームソーダというメニューには心惹かれてしまう。
大人になった今も相変わらずたまーに注文しては子供みたいに足を少しばたつかせながら食べている気がする。
メロンクリームソーダの中で一番好きなのはさくらんぼである。さくらんぼがないのはいけない。あの甘酸っぱいさくらんぼを炭酸とアイスの混じり合った中で寝かせておいて、最後にほんの少ししゅわっと感のするさくらんぼをかじるのが良い。
家族といて、メロンクリームソーダを注文したりすると、よく家族にさくらんぼをとられた。さっさと食べないからいらないかと思ったと笑う顔は悪意がなくて、実に幸せそうに食べるのである。
私は食が細くて今でもそんなにたくさん食べるほうではない。だから強いこだわりはないのだけどメロンクリームソーダは特別である。
デパートのレストランで食べたメロンクリームソーダも、初めてできた恋人と食べたメロンクリームソーダも、鮮明に覚えている。
色々あって今のパートナーと一緒になって、喫茶店にいくとき、パートナーは私がメロンクリームソーダを飲むのをニコニコとみていることが多い。あまり自覚はないけど口元が笑っているらしい。
「美味しい?」
大人が子供に聞くようにパートナーがいう。
「うん」
私はうなづく。
「そう、よかった」
そういう時のパートナーは普段の優しい表情がさらに優しい顔になっている。さくらんぼに手を伸ばしたりしない。私は安心して最後まで完食することができる。
なんでメロンクリームソーダって優しくてどこか懐かしい味がするのだろう。
そういえば亡くなった母方の祖母はメロンクリームソーダが好きだった。一緒に同じものを注文して食べる時、祖母はさくらんぼを私の方にくれたものだ。私も祖母にアイスをのっけてあげたりして、楽しい時間だった。祖母の年齢までとは言わないが、私も長生きして誰かとメロンクリームソーダを共に楽しみたいと思う。
Photo by dokinta