優しくなりたい

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熱を出すたびに私は「優しくなりたい」と思う。スピッツの曲にそういう曲があるが、なにも熱を出してハイになっているわけではなく、「あーー、またキツイ言い方して。優しくなりたいなあ!」みたいな感じである。

 

その思考がでてくること自体熱が高い証なのだが、その都度「いや私充分優しいじゃん?!熱あっても家族にご飯作るし、気遣うし、マジそろそろ神格化するんじゃない?!いや、してるでしょ!」と自身にツッコミ返し「何言ってんだよバカでしょ…」からの落ち込みモードに入りがちである。一人ボケツッコミ。

 

まあこんなことやらなくたって、インコが極端に私の手を避けたり静かな時は私の体調が超絶悪いことが多いので熱のせいだと自覚している。多分、優しくなりたいというのは無自覚の癖なのだ。子供の頃熱を出して寝込んだりすると、かえって母や祖母をより忙しくさせてしまうことへの罪悪感があった。母や祖母や家族は皆健康で風邪もひかない人たちだったから、尚更かもしれない。それで色々我慢して学校にいったり体調悪いのを隠したりして、やっぱり保健室に行って高熱だったりすると母に無茶苦茶叱られるのだ。「今日は忙しいって言ったでしょ!」今思うと心配より自分優先かい、とツッコミが盛大に入るところだが、なんにせよそれに対する回答は常に「ごめんなさい」であった。

 

だから熱を出して罪悪感がわくたびに、私は小さい私を抱きしめて「大丈夫、ゆっくり休んでいいんだよ。よしよし。」って言ってあげるべきなのかもしれない。熱の時にりゅうじの至高の肉じゃがを作っている場合ではないのである。むしろ作ってもらうべきである。

今の家族は優しい人たちなので、「いや、美味しいけど熱の時は大人しく寝てな。飯くらいどうにかするから。」と言ってくれるのだが、発熱した1日目だけおとなしくして二日目三日目はいつも通りこなしてしまうことが多い。私が極端に自分に厳しいのだ。体調崩している時は特に。

 

普段はコントロールできている過去のトラウマみたいなものが、熱が出るとおそらくゆるむのであろう。そこまでわかっているから、最近は「優しくなりたい」という思考がでた瞬間「弱ってるなあ。さっさと好きなもの食べて寝よう。」と考えるようにしている。過去は過去であってそれは幻なのだ。

 

熱が見せる過去の幻影に振り回されないで、蜃気楼みたいなものだとゆるゆる過ごせたらそれが今の私に一番優しいのだと思う。

 

photo by bluesilence