流したり、流れてみたり

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日曜日である。まあフリーで働いている身からすると曜日はゴミの日でざっくり捉えている感じであり、まして今は憩室炎でほとんど流動食みたいなものしか食べられないのでやたら時間がゆっくりに感じる。普段は時間が足りないなあと思うのに、体にほとんど固形物が入っていないとお腹は空くし、空くけど入ってくるのは白湯か麦茶であり、それ以上どうしようもないからかずーっと”まだ1時間しか経っていなかった”という状態である。

本当は絶対安静にしておかなければならないらしいのだが、そんなに寝てもいられないし腹は痛むので朝起きて日中活動(ゆっくり)して夜眠るという生活をしている。

 

時間がゆっくりだとなかなか暇なもので、他の人のブログをちょこちょこと読むのを楽しみにしている。今日は今朝読んで興味深いと感じた記事を紹介し、考察してみようと思う。

katari-mata-katari.hatenablog.com

私は今はどちらかといえば”受け流す”ことが多い。

今は、と書いたのはその技術を習得したのが今から約八年前であり、当時カウンセラーになるべく修練を積んでいた際に師に徹底的に叩き込まれて以来だからである。

私は一つのことを考え始めると色々と思考が回ってしまう性質があり、それは長所でも短所でもあるのだが、なんにせよ1時間もっというとそれ以上相手の話を”傾聴する”にはその性質は邪魔をするのである。しかも黙って聞いていられるタイプでもないのでなおさらであった。

 

流すというのはどういうことであろうか、というこの方の問いは私も全く同じであり、30分もしくは1時間のセッションを何時間もやらされながら悶々と考えながら話を聞くのだが、”メモを取らない””相槌を打つ”の条件下で話を聞きながらポイントを押さえ、なおかつ相手に聞いている風を装わねばならぬのは苦行であった。

そうして結構な時間数の訓練を終えて、ようやくできるようになったのだがそこで分かったのは正しく”受け流す”にはコツがいるのである。

 

まず受け流すというのは無視するということではない。

まして考えを放棄したり、面倒だから適当に相槌を打つということでもない。

考えることがめんどくさいというのなら、自分の興味のないことについて、「ふむ」と思いながらそこで終わるあれである。相手の言葉がわからないと完全に音声のみ入ってくることもあるし、別のことを考えていて相手の話を聞いていないこともある。受け流すとはそういうことなのであろうか。

 

この問いの私の答えは「ノー」だと思う。

こういう興味のないことについて適当に相槌を打ったり、別のことを考えていて相手の話を聞いていないというのは文字通り”聞いていない”のであって、きつい言い方をすると”目の前の相手を無視する行為”である。だから言及されているような態度は受け流すとは言わないと私は思う。健常な人間関係ならそれでも問題はなかろうが、本気で悩みを抱えている相手であったり、仕事になるとそうはいかないことも多い。

 

受け流すには相手の話、態度を”受け”ながら必要なこと以外を水のようにさらりと”流す”ことである。受けるには相手の話、もっというと「何を伝えたいのか」を受けねばならない。これは真正面から話を聞いてしまうタイプの人間にはかなりのダメージがかかる。

だから私が受けた訓練では”受ける”際に”相手の一番言いたいことだけを抽出する”ことを徹底的に叩き込まれた。これには会話の全てに集中する必要があり、まさに”研ぎ澄まして”話を聞かねばならない。相手の話に集中するには前のめりになって話を聞くより、ゆったりと構えてリラックスし、相手の波長と合うように極力自分というものを静かにし、俯瞰するように話を聞く。相手が一番伝えたいことは大体語気や身振り手振りが強くなり、繰り返し出てくるワードがキーである。キーと書いたのは必ずしも相手が言葉通りのことを伝えたいわけではないからである。だから聞き手は”俯瞰”しながら同時に”思考”し、”聞いていますよというサインを出す”必要がある。

これを側から見れば”受け流す”に見えるのであろうと思う。

 

会話では理解が難しいようなら、武術を考えてみてほしい。

受け流すにはやはり力が入っていては相手の思う壺である。

一気に相手の弱いところに入って一本をとろうと試みる。

達人になればなるほど”受け流す”のが上手い。

余計な力が一切入っておらず、研ぎ澄まされているからである。

 

だから研ぎ澄ましすぎて疲れてしまうのは”力が入りすぎている証拠”だと思う。

私自身全く同じであったから、そこはとても共感できる。

力を抜いてリラックスし受け流すなんてとても難しいと感じてしまうのだろう。きっと普段真面目な方なんだろうと思う。色々読ませてもらってその研ぎ澄まされた感覚は洗練された刃物のように美しく、きらりと光るものを感じる。それは間違いなくその人が持った才能だろう。

でもそのままだときっと疲れるだろうなあと思う。

一つだけアドバイスをするなら(余計なことだとは思うが)、呼吸(特に吐く方)をゆっくりすることである。逆腹式呼吸が一番ベストだが、難しいようなら胸式呼吸で吸うときに腹を凹ませて、吐くときは何も考えずに力を抜いて吐くことを練習する。

普段の呼吸が浅い人ほどなかなかすぐにはできないかもしれないがやってみてほしい。

加えて上半身を柔らかくするストレッチもすると効果的である。

何を呼吸くらいでと思われるかもしれないが、傾聴の訓練で叩き込まれたのもこれが一番大事だったりする。呼吸を制するものは場を制するのである。

 

まあ会話を流してみたり、流されてみたり、もっと楽しめばいいのだと思う。

遠い銀河の中で星がぶつかったり、すれ違ったりしているように、私たちもぶつかったりすれ違ったりして人生という旅を楽しんだらいいんじゃないかな。

それにしても本当に近年稀に見る秀逸な文章だと思う。

この方が本とか書いてみたら超面白いものができるんじゃないかな。

 

Photo by hokori / yu_dai

岐阜県中津川付知峡にある青い透き通った水が流れる様子のフリー素材 https://www.pakutaso.com/20240831232post-51914.html