おいでよ、春の野原へ

毎年暖かい季節になってくると思い出す詩(うた)がある。

ユゴーの作詩にフォーレ作曲のメロディで歌われる「Mai」(五月)である。

フランス語で軽やかに歌われるこの曲は、春らしさに満ち溢れている。

 

Puisque Mai tout en fleurs dans les prés nous réclame,

(野原へと、花でいっぱいの5月がぼくたちを呼んでるから)
Viens! ne te lasse pas de mêler à ton âme

(おいでよ、そしていやになるほど君の心を通わすんだ)
La campagne,les boi,les ombrages charmants,

(草原と、森と、そして素敵な木陰や)
Les larges clairs de lune au bord des flots dormants,

(眠っている川のほとりに差し込む月の光と)
Le sentier qui finit où le chemin commence,

(大通りのところで終わる小道や)
Et l'air et le printemps et l'horizon immense,

(そして空気と、春と、そして果てしない地平線と心を)
L'horizon que ce monde attache humble et joyeux

(大地をつなぐ地平線はつつましく、陽気だ)
Comme une lèvre au bos de la robe des cieux!

(天の衣の下唇のように)

 

Viens! et que le regard des pudiques étoiles

(おいでよ、そしてほうき星の霞を見るんだ)
Qui tombe sur la terre à travers tant de violes,

(それは地上に、たくさんのヴェールとなって降りてくる)
Que l'arbre pénétré de parfums et de chants,

(香りと歌声にひたされている森や)
Que le souffle embrasé de midi dans les champs,

(昼間の野原の燃え立つ息遣い)
Et l'ombre et le soleil et l'onde et la verdure,

(そして木陰や、太陽や、波や緑)
Et le rayonnement de toute la nature

(すべての自然の輝きを)
Fassent épanouir,comme une double fleur,

(八重咲きの花が開くように咲かせるんだ)
La beauté sur ton front et l'amour dans ton coeur!

(美しさは君の顔に、愛を君の心に)

翻訳by藤井宏行 

https://www7b.biglobe.ne.jp/~lyricssongs/TEXT/S1110.htm

 

この詩に曲が付いたのがこちら。

www.youtube.com

検索をかけると女性ばかりなのだけど、この詩自体が恋人を誘い出す男性のイメージなので今のところAndrea Bocelliが一番しっくりくるかなと思っている。

 

この曲を聞くと春だなあって感じがする。

私もあたたかい季節になってくるとなんとなくほがらかになって、誰かを誘って外に出たくなるし、一緒に楽しもうって気持ちになるからとても共感できる。

 

それにしても「レ・ミゼラブル」を書いたユゴーが、こんな詩を書いていたとは驚きである。若さにあふれ、なんと力強さを感じるのだろうと毎回詩を読むたびに思ってしまう。恋人に手を差し出す若かりしユゴーを想像するとかなりほほえましい。

 

そんなことを考えながらネモフィラの咲いた庭を見ながら想っていた。

Photo by Redsugar

優しい青に包まれるネモフィラのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20230558131post-32732.html